幼稚園では、お帰りの時間に「今日あったよかったこと」を話します。お互いに自分のうれしかったことや楽しかったことを話します。
「今日ハッピーだったこと、幸せだなって思ったことを教えて!」
「給食で大好きなパンを食べたよ」「お友だちとドッジボールして遊んだよ」
お友だちや先生と幸せな気持ちを共有すると、その場がホッとするものになります。あたたかい場を感じながら、子どもたちは「幸せ」は何か特別なことでなくて、日常にあることを知ります。こうして小さな幸せに気づく感性が育っていきます。
ペンシルベニア大学のマーティン・セリグマン博士は、毎日寝る前に「3つのいいこと(Three Good Things)」を書くと幸福度が高まるという研究結果を報告しています。
Seligman, M. E. P., Steen, T. A., Park, N., & Peterson, C. (2005). Positive psychology progress: Empirical validation of interventions. American Psychologist.
人間は生まれつきネガティブなことに注目しやすく、記憶にも残りやすい脳をもっています。これをネガティビティバイアスといいます。人は、普通にしていたらネガティブな方を見てしまうので、ポジティブなことに目を向けるエクササイズが効果的だということです。
「今日はどんな楽しいことをした?」と質問することで、子どものポジティブ感情のスイッチがオンになります。寝る前に親子で今日うれしかったことや楽しかったことを3つ話すのもおすすめの習慣です。1日を幸せな気分で終えることができれば睡眠の質も良くなりますし、親子でお互いに話すことによって、親子の絆がぐっと深まります。
1回の失敗でだめだと思うか、失敗を活かして次につなげるか。「失敗」をどう捉えるかによって、人生は大きく異なります。
チャレンジを恐れず、努力できる人へと成長できるか否かの鍵となるのが「マインドセット」です。スタンフォード大学のキャロル・ドウェック博士によると、人には2種類のマインドセット(無意識の思考パターン)があるそうです。
しなやかマインドセット(Growth Mindset)
挑戦することで、自分の世界をどんどん広げていけるという考え方。困難に直面しても、失敗や間違いを糧にして継続的に努力し、自分の成長や成功につなげることができます。
こちこちマインドセット(Fixed Mindset)
「どうせ無理、やっても変わらない」と思ったり、できないことを恐れたりするため、新しいことや難しいことなどの失敗する可能性のあることに挑戦しません。そのため成長する機会を失ってしまいます。
Dweck, C. S. (2006). Mindset: The new psychology of success. New York: Ballantine Books.
ドウェック博士の調査によれば、幼児期にはすでにマインドセットの違いが出ていることがわかっています。
人は、赤ちゃんのときは失敗を恐れず成長し続けます。それが、周りの大人の関わり方によって、どちらかのマインドセットに寄っていきます。こちこちマインドセットになると、やったことがないことは「やらない」「無理」と言ったり、失敗したら恥ずかしいと思ったりして、自分で枠を作ってしまいます。これではもったいないですね。
マインドセットは変えることができます。しなやかマインドセットを育んで、子どもたちの可能性を伸ばしてあげたいですね。ポイントは子どもをほめる時と失敗した時の言葉かけです。
ポイント1 行動やプロセスをほめる
「上手だね!」「頭がいい!」は言いがちなほめ言葉。でもこのことが子どもの可能性を狭めているかもしれないので注意が必要です。なぜなら、子どもたちは「上手かどうか、才能があるかないかで自分の価値が決められるんだ」というメッセージを受け取るからです。すると、上手でないこと、できないことが「恥ずかしい」という感情を持ち、「挑戦しない」という行動をとります。
しなやかマインドセットを育てるには、能力や結果ではなく、行動やプロセスをほめる言葉かけが重要です。「たくさんの色を使って描いたんだね」「あきらめないで最後までやったんだね」というように、努力してきたプロセスを認める言葉かけをすることで、「努力することで力は育つんだ」というしなやかマインドセットを育てることができます。
ポイント2 失敗は成長過程
子どもが失敗したときに「何度言ったらわかるの!」「余計なことしないで」「あーもう!」なんて言いたくなることがあるかもしれませんが、このような言葉をかけていると、子どもは「失敗することは悪いことだ」と学習してしまい、失敗したくないから挑戦しようとしなくなってしまいます。失敗は大事な経験です。「なんとかなる!」「ママも昔できなかったよ!」「困ったら一緒に考えよう!」と声をかけたり、大人自身が挑戦し続けたり失敗から立ち直る姿を見せたりすることが大切です。
ポイント1 行動やプロセスをほめる
「上手だね!」「頭がいい!」は言いがちなほめ言葉。でもこのことが子どもの可能性を狭めているかもしれないので注意が必要です。なぜなら、子どもたちは「上手かどうか、才能があるかないかで自分の価値が決められるんだ」というメッセージを受け取るからです。すると、上手でないこと、できないことが「恥ずかしい」という感情を持ち、「挑戦しない」という行動をとります。
しなやかマインドセットを育てるには、能力や結果ではなく、行動やプロセスをほめる言葉かけが重要です。「たくさんの色を使って描いたんだね」「あきらめないで最後までやったんだね」というように、努力してきたプロセスを認める言葉かけをすることで、「努力することで力は育つんだ」というしなやかマインドセットを育てることができます。
先生:「知らないこと」や「やったことがないこと」をする時は誰でもドキドキするね。でもやってみたら、どうだった?
子ども:「もっとやってみたい!」「全然こわくなかった!」
先生:「どうして手を入れてみることができたの?」
子ども:「面白そうだったから!」「中に何があるか知りたいと思ったから!」
先生:「わぁ、それはわくわくするね。みんなは『知らないこと』にも挑戦できる力があるんだね!」
楽しい遊びを通して、子どもたちは未知なことに挑戦する喜びを体験します。「自分には立ち向かう力がある!」と思えることが、前に進む大きな力になります。
カリフォルニア大学デービス校のロバート・エモンズ教授は「感謝の心をもっていると、妬み、憤り、後悔や落ち込みといった、私たちを幸福から遠ざける有害な感情を抱かなくなる」といっています。
Emmons, R.A. & McCullough, M.E. (2003). Counting blessings versus burdens: An experimental investigation of gratitude and subjective well-being in daily life. Journal of Happiness Studies.
日頃から感謝の気持ちを持てる子は学校でも良い成績を残し、鬱になる可能性が低く、趣味や課外活動により積極的に参加する傾向があるといいます。筑波大学の相川充教授が小学生を対象に行なった調査では、子どもたちの感謝の気持ちが友人関係における好循環をつくり出すこともわかりました。
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17K04307/
感謝の気持ちをはぐくむ
4つのポイント
1.大人が見本になる
お手伝いをしてくれた、お花をくれた、体調を気遣ってくれたなど、子どもが何かをしてくれたときはもちろんですが、それ以外でも、宅配の荷物を受け取るとき、誰かがドアを開けてくれたとき、エレベーターに先に乗っていた人が「開く」ボタンを押してくれたときなど感謝の気持ちを表すシーンは意外と多いものです。こうした場面で感謝している身近な大人の姿を見て、子どもも「ありがとう」の使い方を学んでいきます。
2.簡単に代わりを与えない
なんでもすぐに新しいものが手に入ってしまう今の時代。子どもがモノに対してありがたみを持ちづらくなっています。モノが壊れたり、なくしたりしたときに、すぐに新しいのを買うのはやめましょう。そのモノの代わりは簡単に手に入らないと分かっていれば、モノのありがたみを感じ、丁寧に扱うようになります。何かほしいものがあるときも、すぐ買い与えずに、「誕生日まで待とうね」などと楽しみに待つようにするといいでしょう。その方が喜びや感謝の気持ちは何倍にも大きくなります。
3. 「ありがとうは?」と無理強いしない
なかには「ありがとう」と素直に言えない子もいます。意味も分からずにただ「ありがとう」と言えばいいと思っている子もいます。「こういうときはなんていうの?」とつい言葉にしてしまいがちですが、この言葉を多用してしまうと、子どもはそのうち嫌気がさしてしまいます。
The Washington Postにも「子どもにありがとうを無理強いしなくなったことで、感謝の気持ちをきちんと持てる子になった」という記事があります。まずは、大人が感謝の気持ちを示すことで子どもたちの見本となりましょう。
4. 自然をセイバリングする
型にはまったマナーや言葉を教えるだけでは不十分です。PEEC(ポジティブ教育カリキュラム)では、花の香りや食べ物を「セイバリング」したり、宇宙や自然の美しさや不思議を感じることを提案しています。「セイバリング」は何か自分を幸せにしてくれるものをよく味わうことです。たとえば、園庭のキンモクセイを集めてポプリを作ります。いい香りを楽しめるのは「自然からの贈り物」と気づくことで、自然への感謝の気持ちを育むことができます。
2.簡単に代わりを与えない
なんでもすぐに新しいものが手に入ってしまう今の時代。子どもがモノに対してありがたみを持ちづらくなっています。モノが壊れたり、なくしたりしたときに、すぐに新しいのを買うのはやめましょう。そのモノの代わりは簡単に手に入らないと分かっていれば、モノのありがたみを感じ、丁寧に扱うようになります。何かほしいものがあるときも、すぐ買い与えずに、「誕生日まで待とうね」などと楽しみに待つようにするといいでしょう。その方が喜びや感謝の気持ちは何倍にも大きくなります。
ありがとうのくさり
あるクラスでは、子どもたちが「ありがとうの気持ち」を絵や文字で書き、それを輪つなぎにしてお部屋に飾りました。「ありがとう」を書きたいときにつなげていくことができます。
何気ないセリフになりがちな「ありがとう」を見える化することで、日常には感謝することがたくさんあることを認識できます。
みんなの「感謝の気持ち」が長くつながって、それを見るだけでも幸せな気持ちになります。
ウェルビーイングとは、心も体も社会的にも「良い(well)」状態を指し、「幸せ」という意味で使われます。
日本のウェルビーイングは低い
国連が毎年発表する「世界幸福度調査」で日本は先進国の中で下位にあります。ユニセフによる「子どもの幸福度調査(2020年)」でも、日本の子どもの精神的幸福度(Good mental well-being)はワースト2位、社会的スキル(Skills for life)も低いと発表されています。
https://www.unicef.or.jp/news/2020/0196.html
ポジティブ心理学
ではどうすればウェルビーイングに生きられるのでしょうか?それを研究するのが「ポジティブ心理学」という新しい学問で、私たちの暮らしや人生に役立つ研究がたくさんあります。
ポジティブ心理学の父であるマーティン・セリグマン博士は、ウェルビーイングは6つの要素からなるとしています。PERMA +Vモデル(明るい感情・物事への積極的な関わり・他者とのよい関係・人生の意義の自覚・達成感・健康)この6つの要素を意識して実践することで、ウェルビーイングは総合的に高まり、幸せに近づくことができると考えます。今まで曖昧だった「幸せ」を構成する要素が明確化されたことで、よりよく生きるための道筋がわかりやすくなりました。
科学的根拠にもとづき個人の幸せを追求することで、公私ともにいい影響が期待できるため、大手企業や世界各国の政府でもポジティブ心理学が活用されています。
ポジティブ心理学の知見を応用した教育アプローチをポジティブ教育(Positive Education)といい、欧米では多くの学校で取り入れられています。ウェルビーイングの向上に焦点をあてた教育なので、ウェルビーイング教育とも言われます。
OECD(経済協力開発機構)が定めた教育指針(Education 2030)では、教育のゴールをウェルビーイングとしています。
ウェルビーイング
「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。(世界保健機関WHO)」このことをウェルビーイングと言い、「幸せ」という意味で使われます。
「心身ともに健康で、自分らしく幸せに生きる」スキルを学ぶのが、これからの教育の目的です(OECD Education 2030)。子どもを取り巻く環境がウェルビーイングであることも重要です。本園は、好奇心があり、視野が広く、互いを思いやる人が集まり、幼児・教師・保護者が共に成長する幼稚園を目指しています。
愛情の土台
アタッチメント(愛着)は子どもの心が育つ基本です。全てを受け入れてもらえる、守ってもらえるという心理的安全性を感じると、そこを安全基地として好奇心を外の世界に向けるようになります。危険や不安を感じると安全基地に戻り、安心を得ると、また外の世界を探索できるようになります。人は「心の安全基地」があるから成長することができます。本園では、幼稚園(教師やお友だち)を安全基地として、園児が人への信頼感をはぐくんでいくことを最も重要な課題としています。
わくわくしてあそぶ
“プレイフル”は「わくわく」「いっぱいあそぶ!」という意味です。人は生まれながらにして楽しみや好奇心の欲求をもっています。あそびは成長に欠かせないもので、子どもはあそびを通して様々なことを学びます。幼稚園は楽しいことがいっぱい!瞳を輝かせて、体も心も思いきり動かして遊びます!
ポジティブ教育
ポジティブ教育は「自分らしく、幸せに生きていく力(非認知能力)」を育むことを目的にしています。特別な教材はなく、楽しいあそびや対話の体験を通した幼児自身の気づきを大切にします。子どもの幸福度も学力も向上することが実証されており、世界で広まっている最先端の教育法です。
ポジティブ教育は、単にポジティブ思考になるということではありません。ポジティブな感情もネガティブな感情もありのままに認めることで、自分本来の力が湧いてきて、困難なことがあっても乗り越えて前向きに生きていけるようになります。
自分らしくいきいきと生きる
ペンシルベニア大学のマーティン・セリグマン博士は、「幸福な人生を送る人は自分の強みを知っていて、それを使っている」といいます。親や教師が子どもの(性格の)強みに注目すると、子どもの自己効力感が高まることも調査でわかっています。
人の弱みではなく強みを、ないものよりもあるものを、結果ではなくプロセスを、過去よりも未来を、強みを伝え合い、多様性を認める自由であたたかな園生活で、一人ひとりの輝きを大切に育てていきます。
愛情の土台
アタッチメント(愛着)は子どもの心が育つ基本です。全てを受け入れてもらえる、守ってもらえるという心理的安全性を感じると、そこを安全基地として好奇心を外の世界に向けるようになります。危険や不安を感じると安全基地に戻り、安心を得ると、また外の世界を探索できるようになります。人は「心の安全基地」があるから成長することができます。本園では、幼稚園(教師やお友だち)を安全基地として、園児が人への信頼感をはぐくんでいくことを最も重要な課題としています。
楽しい遊びを通して
「自分らしくいきいきと生きる力」
を育みます。
しなやかマインドセット・好奇心・EQ
感情のコントロール・レジリエンス
人とのよいつながり・ 健康な生活習慣
感謝・思いやり
人生を豊かにする力と言われる「非認知能力」と「ウェルビーイング」を育むことが目的です。ポジティブ心理学をベースとしているのでポジティブ教育と言います。
ポジティブ教育の効果は、米スタンフォード大学、英オックスフォード大学でも実証されており、世界の名門校が多数採用しています。教育先進国の北欧では9割の幼稚園・学校で行われています。
特別な教材はありません。最新の研究成果や考え方が示されている幼児用カリキュラムに基づいて、本園の教師が、絵本や楽しい遊びや対話を通して日常に取り入れています。本園は日本の学校で初めて、このカリキュラムのライセンスを取得しました(2020年)。